1 はじめに
最近では、誰でも気軽にクレジットカードを利用できたり、金融業者からお金を借りたりできる世の中になりました。それに伴い、債務整理や自己破産などの問題も増えてきています。
金銭関係のトラブルは、精神的・経済的な負担も大きく、また周囲への影響も避けられません。
しかし、そのような厳しい状況でも、問題について正しく理解をし、専門家に依頼することで問題の早期解決を図ることができます。
このページではまず、債務整理・借金問題で「よくあるお悩み」を確認して、次の3つの項目「債務整理のための3つの手段」、「債務整理・借金問題を弁護士に依頼するメリット」、「過払金」について一緒に確認をしていきましょう。
2 よくあるお悩み
債務整理・借金問題でよくあるお悩みには次のようなものがあります
・お金を借りては返す自転車操業を続けてばかりで、完済はもう難しい
・取り立ての電話や封書が精神的に辛く、少しの間でも止めてほしい
・もう完済は難しいので債務整理や自己破産をしたいが、家族に知られないか心配
・過払い金の請求をしたいけど、どうしたらいいか
・債権者から裁判を起こされてしまった
・勤務先に給与差押の通知が来てしまった
当事務所でも、こういったお悩みでお困りのご相談者様が多くいらっしゃいます。
3 債務整理のための3つの手段
それでは実際に債務整理・借金問題に直面した時にどのような手段が取れるでしょうか。「自己破産」「任意整理」「個人再生」の3つの手段について確認をしていきましょう。
自己破産
「自己破産」という言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。
この手段は「借金・債務が完全に消滅すること」を目的として「裁判所に対して行う手続き」です。裁判所から「免責(めんせき)決定」が出されると、債務や借金のすべてを、返済する必要がなくなります。
「自己破産」と聞くと、良くない印象をもったり、家族や周りの人にばれないかと不安になる方もいますが、これは法律で認められている正当な制度です。
ご自身のケースに「自己破産」が最適な場合には、正しく活用して再起を図りましょう。
(1) 自己破産の注意点
ア マイホームなどの高額な財産は手放すことになる
なお、「自己破産」=「家財道具や車など全財産を失う」と思われる方もいますが、必ずしも全ての財産を失うわけではありません。金額にもよりますが、資産価値の低くなった車や預貯金、生命保険など、生活に必要な財産の中には維持できるものもあります。
イ 「免責決定」を受けるまでの間は、警備員など一定の職業に就けない
ウ 「自己破産」をするといわゆるブラックリストに登録され、ローンなども含めお金を借りる事が事実上困難になる。
エ 借金の原因がすべて、浪費・ギャンブルの場合は破産手続が困難になる
(2) 自己破産の具体的な手続きの流れ
ア 受任通知の送付
弁護士から各債権者に対して、破産手続を受任したことを知らせる「受任通知」を送付。受任通知が債権者に届いた時点で、請求が止まります。
イ 申立ての準備
弁護士は財産目録などの必要書面を作成し、依頼者は財産等に関する各種資料を集めます。
ウ 裁判所に自己破産の申立て
弁護士が書面・資料類を作成し、裁判所に申立てをします。裁判所側で各書面を確認し、補正の必要があれば裁判所から指示があり、それに対応します。
エ 裁判所で破産手続開始決定
裁判所が、完済は困難であると判断すれば、「破産手続の開始決定」が出されます。
オ 裁判所で「免責審尋(めんせきしんじん)」
裁判所にて裁判官から今までの経緯等について質問をされます。弁護士も同席します。
カ 免責許可決定
裁判所から「免責許可決定」という書面が出されます。これが確定することにより、借金返済は不要になります。
上記の手続きに必要な期間ですが、特に問題がない案件であれば半年程度が想定されます。もちろん、資料収集にかかる時間などにより変動することもありますのでご注意ください。
なお上記手続きは、破産申立をする人に「財産がほとんどなく、免責についても問題がない」ケースです。
逆に、不動産を含む高額な財産を所有している場合や、免責に関して問題が生じ得るケース(浪費やギャンブルよる借金が多い等)などは、手続きが更に複雑となります。「破産管財人(かんざいにん)」という破産者の財産管理や免責について調査をする方が選任され、異なる手続となるため、手続き期間も長期化します。
任意整理
「任意整理」とは、「弁護士が債権者と交渉し、債務や借金について長期の分割払いとする契約を合意する」ことを目的にした「裁判所は利用しない」手続きです。
分割期間については、具体的な事情やどの債権者かなどによって異なりますが、一般的には「5年程度」の長期に分割することが可能となります。借金には利息・遅延損害金が付され続けますので、終わりが見えなくなりがちですが、「任意整理」手続きではそれらの大幅な減額を目指します。
(1) 任意整理の具体的な手続きの流れ
ア 受任通知の送付
弁護士から各債権者に対して、任意整理手続きを受任したことを知らせる「受任通知」を送付。受任通知が債権者に届いた時点で、請求が止まります。
イ 債務の調査・資料収集
弁護士がこれまでの取引経過を、各債権者から取り寄せます。
ウ 弁済額の策定
依頼者と弁護士とで話し合い、各債権者に対する毎月の弁済額や総額を検討し策定します。
エ 債権者との交渉
弁護士が債権者と、債権額や支払方法について交渉します。
オ 債権者と合意書の取り交わし
毎月の支払金額や総額、振込口座の記載された書面を取り交わします。
カ 返済開始
依頼者は合意書に従って返済を開始します。
個人再生
「個人再生」とは、「債務や借金を大幅に減額し、残額を3年から5年で返済すること」を目的とし「裁判所に対して行う手続き」です。
個人再生手続が完了すれば、債権額は以下のように減額されます。
100万円未満の負債 → その金額
100万円以上500万円以下の負債 → 100万円
500万円を超え1500万円以下の負債 → 債権額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下の負債 → 300万円
3000万円を超える負債 → 債権額の10分の1
※ ただし、上記の各金額よりも、依頼者の所有する財産の総額(「清算価値」といいます)のほうが高額の場合には、清算価値が、弁済額となります。
↑部分は表にしてください。
(1) 個人再生の具体的な手続きの流れ
ア 受任通知の送付
弁護士から各債権者に対して、「個人再生」手続きを受任したことを知らせる「受任通知」を送付。受任通知が債権者に届いた時点で、請求が止まります。ただし、住宅ローンに関しては返済継続となります。詳しくは次の項目で説明します。
イ 申立ての準備
護士は申立書等の書面類を多数作成し、依頼者は収入・財産などの資料を集めます。
ウ 裁判所に個人再生の申立て
裁判所が各書面を確認し、補正の必要があれば裁判所から指示があり即時に対応します。
エ 裁判所で再生手続開始決定
オ 弁護士が再生計画案(各債権者に対する弁済額や総額の計算)を作成・提出
カ 裁判所で再生計画が認可される
キ 依頼者は計画に従って返済を開始
(2) 自己破産と個人再生の違い
ここまで3つの手段「自己破産」「任意整理」「個人再生」を確認しました。
その中で、裁判所が関わってくる「自己破産」「個人再生」について、大きな違いを2つ確認しましょう。
ア 住宅ローンがあるマイホームの維持を目指せる
「自己破産」ではマイホームは手放すことになりますが、「個人再生」では、裁判所の許可があれば、住宅ローンについては契約通りの弁済を続けられます。なお、その他の債務については個人再生手続の対象として減額されます。
イ 借金の事情は問われない
「自己破産」では、「全ての借金はギャンブルに使う為だった。」など借金の事情によっては「免責不許可事由」となってしまいますが、「個人再生」では借金の事情を問わず、借金減額ができます。
4 債務整理・借金問題を弁護士に依頼するメリット
それでは債務整理・借金問題が発生した際に、弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのか、次の5つの点を確認していきましょう。
1 最適な借金整理の方法がわかる
借金の理由は人それぞれです。また,債権者数や債権額も個人によってバラバラです。さらに、現在借金をしている人の収入や資産状況も当然違います。上記でみたよう借金問題にはいくつか法的整理の仕方がありますが、どの方法が最適なのか、あるいは法的整理をしない方がよいのかなどは、借金額、収入、職業、家族、資産等の個別の事情により異なります。医者が患者を診察して治療法を定めるのと同じで,弁護士に相談することで,依頼者にとって最適な借金整理の方法が分かります。
2 手間を省くことができる
すでに述べてきた様に債務整理する場合、各金融業者等との連絡や資料集め、書類作成などが必要となり、個人で行うには非常に煩雑で負担がかかります。
また,契約書などの重要書類についても、文言の一字一句まで正確な意味がわからないと、混乱や誤解を招き、トラブルになる危険もあります。専門家である弁護士に依頼すれば,こういった問題は解消されます。
3 家族に内緒にできる場合も多い
ご自身で債務整理をされると、家族の前で金融業者からの連絡が来て、家族に発覚するケースがあります。その点、弁護士に依頼すれば,連絡等やりとりはすべて弁護士が行います。
また当事務所では、依頼者への書類受け渡しの際、弁護士であることを伏せての郵送したり、事務所にご来所頂いての手渡しも可能ですので、発覚の危険性は低くなります。
(※こちらは必ずしも「当事務所が家族に知られないことを保証する」という事ではありませんのでご了承ください。)
4 督促が止まる
返済が遅れてしまい、債権者から督促の電話・通知が来ると、精神的負担はより重くなります。弁護士が受任して連絡窓口となれば、依頼者への督促の連絡はなくなり、この負担は解消できます。
5 司法書士のような制限がない
平成15年に司法書士法が改正され,認定司法書士も「任意整理」を行えるようになりました。
しかしその範囲は「140万円以下の借金」と法律で限定されています。
弁護士にはこのような制限はありません。
また司法書士は「自己破産」や「個人再生」は行えませんが、弁護士であればこちらも可能です。
5 過払金返還請求
CMなどでもよく「過払金」という言葉が使われていますので、ご自身が該当しているか気になる方も多いのではないでしょうか。
この「過払金」とは、「過去に、利息制限法を超える利率(年率29%など)で契約し、長年返済を続けたり完済している場合には、払い過ぎとなっている可能性があり、超過分の返還請求ができる」というものです。
1 利息制限法の上限
この「過払金」問題の背景には、平成22年頃まで消費者金融等の貸金業者が定める利率が、法の上限を超えて高額だったことがあります。
その利息制限法の上限は以下のとおりです。これよりも高い利率で契約し、長年返済を続けてきた方は、弁護士にご相談されるようおすすめします。
(借入の元金)
10万円未満・・・年20%
10万円以上100万円未満・・・年18%
100万円以上・・・年15%
↑表にしてください。
2 過払金返還請求の具体的な手続きの流れ
それでは、「過払金返還請求」手続きを弁護士に依頼した時、どのような流れになるか確認しましょう。
(1) 受任通知の送付
弁護士から各債権者に対して、「過払金返還請求」手続きを受任したことを知らせる「受任通知」を送付。受任通知が債権者に届いた時点で、請求が止まります。
(2) 債権の調査
弁護士がこれまでの取引経過を取り寄せます。
(3) 債務の確定
利息制限法に基づき、正しい借金の額を計算し直し、過払金の有無・額を確認します(引き直し計算)。
(4) 過払金返還請求を通知・和解交渉
債権者に「過払金返還請求」を通知し、弁護士が債権者と和解交渉をします。和解がまとまれば、和解書を取り交わします。
(5) 和解書で決定された期日に過払金の返還を受けます。
なお、交渉によって和解がまとまらなければ、訴訟を提起することになります。
6 まとめ
債務整理・借金問題は、昨今では簡単に起こりやすい問題でありながら、直面する方にとっては心身ともに大きな負担となる、非常に深刻な問題です。
債務整理のためにいくつか手段がある事はすでにご紹介しましたが、どの手段がご自身にとって最適なのか、また実際の進行や交渉など、専門家の深い知識や経験が必要になる場面が非常に多いです。
またこの問題は、時が経てば経つほど深刻さを増していく側面があります。
債務整理・借金問題や過払い金などでお悩みの方は、お一人で抱え込むのではなく、まずは一度弁護士へご相談ください。